創造理工リテラシー 学部長賞受賞作品

Artificial Intelligence×Agricultural Industry 人工知能×農業

20班Aグループ

釆谷さくら
岡山大輔
キムテヒョン
根岸友希

私たちの班は、AI×AI、Artificial Intelligence×Agricultural Industry、つまり、人工知能と農業の結びつきやその可能性、応用などについて探ることにしました。今となっては身近なものとなったAIについて、そもそも社会に受け入れられるAIとは何なのか、という疑問にはじめ、今の農業の現状を踏まえた上での活用法や課題などについて少しでも皆さんにお伝えしていきます。よろしくお願いします。

さて、そもそも社会に受け入れられるAIとはどういったものなのでしょうか。私たちが注目したのは、この「受け入れられる」という部分です。全ての物事にはメリットとデメリットがあります。AIの話を一旦置いておいて、別のことについて考えてみましょう。例えば、高速道路。代金を払うことで一般道路よりも速い速度を出しての運転が可能であり、目的地に早く着くことができるという大きなメリットがあります。しかし、よく考えてみてください。ノンストップで速いスピードを維持したまま走り抜けなくてはならない、これは単純に考えて、とても危険な行為だと思いませんか?でも、早く着くというメリットのために人間は高速道路を作りました。周りを見回してみると、多くのものや社会の基盤になるものにおいて、メリットとデメリットの重みが比較され、よりメリットに天秤の傾くものを選択していることがわかると思います。AIにおいても、少なからずこの流れが汲まれており、よりメリットの重みがある方が受け入れられるのだと考えました。

では、ここまでの流れを踏まえて、本題の農業についてみていこうと思います。皆さん既にご存知のことだと思いますが、現在、農業就業人口は減少を続けています。少子高齢化や若者の農業離れによって、深刻な人手不足に陥った次世代の農業を支えるのは、AIかもしれません。

まず紹介したいのが、こちらのecoRobotixという除草ロボットです。スイスの企業によって開発されたもので、太陽電池で動きながら雑草を画像認識して駆除します。除草剤は従来の1/20に抑えられ、経費も30%削減できます。環境に考慮された非常に効率の良い自動ロボットになっています。

また、こちらはアメリカのシリコンバレーで開発されたロボットによって完全自動化された農園です。「The Brain」という名のAIが自ら判断や命令を各機能のロボットに送ることができ、効率よく大量に収穫できるようになっているといいます。具体的には通常の10%の水量で、単位面積当たりの30倍の生産量を確保できる、数字に表すとより一層その効率の良さが伺えますよね。この農園は運用も現実的になりつつあり、決して夢物語ではないのです。

さらに、日本国内のinahoという企業によって開発されたのがこちらの全自動野菜収穫ロボットです。画像処理技術、ロボットアーム、自立走行の3つの技術が収穫作業の核となっています。収穫適期の野菜を自動で判別し、収穫します。実際に人が行う収穫作業は大変で、腰を痛める人も多くいます。このロボットは農業従事者からの反応もポジティブなものが多く、彼らの負担を減らすことができそうです。

ここで、農業におけるAIのメリットとデメリットについてみてみましょう。メリットとして、第一に労働者の肉体的負担と人件費の軽減が挙げられます。また、効率があがることによる収量増加や、食料自給率の上昇、過去の生産状況をデータとして活用できるようになるのもポイントです。さらに、農業がノウハウを必要としない挑戦しやすい職業になります。一方、デメリットも少なからず挙げることができます。全てをAIに置き換えるには莫大な初期費用が必要ですし、高齢者にとって活用が難しい可能性も考慮する必要があります。また生産者によって生み出されていた固有の味といったものが失われるリスクもあります。

このように、一度耳にしただけではイメージしにくい「農業へのAI導入」が実現する日は着実に近づいてきています。AI導入のメリットが大きいことは疑うまでもありません。デメリットに関しても、消費者や農業従事者について倫理的な問題があるわけではないため、十分に改善の余地があるでしょう。近い将来の農業の形は人間中心からAI中心へと根本的に変わる可能性が十分にあります。しかしここで改めて認識しておきたいのは、AIはあくまで人手不足と高齢化に伴う問題を解決する切り札である、ということです。いくら完全自動化農園が実現可能でも、AIに農業全てを飲み込まれて人間疎外になっては本末転倒です。現在開発されているロボットは工程や品種ごとに細かく使い分けられるものが大半です。農業従事者にとって、農産物の生産過程におけるツールとしてAIが活用されるのが理想です。

そのためには今後、他分野の技術との融合や完全な自動化技術の確立が必須です。経営を個人単位ではなく大規模化して、一括した管理をすることも重要でしょう。その際には生産管理の技術が個々の野菜の栽培方法を踏まえて活用されればより一層効率的な経営が可能になります。また今はまだ参入企業が少ないものの、多くの企業が参入してくれば企業間が競合することで新しい技術が生まれ、導入費用が少なくなります。これらの動きが本格化していけば、農業においてAIは受け入れられるものとなるでしょう。

以上です。ご清聴ありがとうございました。

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創造理工学部長(当時)の菅野先生と授賞式にて

コメント

岡山大輔

創造理工リテラシーでは、入学して間もない時期に他学科の人達と議論をし発表という形で結論を出す事が求められる。私たちの班は、AI(ロボット)を農業に活かすことのメリットとデメリット、課題などについて考えた。メンバーと熟議をし、その過程でAIや農業の現状についての理解を深められた。AIとの共存のためには、各人が問題意識を持ちながら、こういった熟議をすることが欠かせないと感じた。この授業で、学部長賞の受賞を目指して、授業外の時間も何とか調整したりしながら、皆で協力して取り組んだ事は財産だと思う。

根岸友希

学部長賞を取ろう!と意気込んだプレゼンが評価されて大変嬉しいです。この発表では農業について取り上げましたが、出だしに述べたメリットとデメリットのくだりはおよそ全ての技術について言えることだと思います。世の中で新たなものが生まれるたびに課題点が指摘されますが、「いかなるものにもデメリットがあるが、メリットが多いために採用されている」のだということを忘れずにいたいものです。

釆谷さくら

学部長賞の受賞を大変嬉しく思います。
AIと農業という二つの切り口から、そのメリットやデメリットを探りました。違う学科のメンバーとともにプレゼンを制作する過程では、意見をまとめたり発信するための基本的な感覚を身につけることができました。
創造理工リテラシーという授業は、講義と演習が組み合わさった活発なもので、自ら積極的に働きかけることで学べることが増えると感じています。この学びを、将来的に生かしていければと考えています。