女性の元気が良いですね。
一昨年は3年生に授業を受けもったので、そのときに学生と接しましたが、男性は元気が無いかな。人数的にもわれわれの時代には男性100人にくらい在籍していたのに対し、女性は7人だったと記憶していますが、今や4割が女性でしょう?それも優秀な人が多い。女性が引っ張っていく時代なのかな、と思います。
全般的に早熟な子が減ったような印象を受けました。早稲田の建築には伝統的に「手伝い制度」というのがあります。文字通り、先輩の手伝いをすることで様々な作業を覚えていきます。——1年生の時には2年生の先輩や3年生の先輩さらに4年生の先輩を―と手伝うわけですが、これによって、3年先の内容を先取りして学ぶことになりますから、自然と早熟になったのです。
近ではその制度もないからか、建築に一家言あるような人は、あまり生まれないのかもしれません。今の時代に昔のような手伝い制度を復活させるというのは、現実的ではないですし、良いことだとも思いません。しかし、早稲田の建築に流れる精神、理念のようなものは継承してもらいたいという思いがあります。
そんな思いで、早稲田建築アーカイブスというWEBサイトを立ち上げました。
これは2010年の建築学科が100周年の佳節に、記念事業としてスタートしたものです。私くらいの年代だと、OBとの連携がしやすいので委員長に任命されたのでしょうか。ご存命でない方については、映像や資料をかき集め、お話を伺える方には取材をさせていただきました。菊竹清訓先生、田中彌壽雄先生は、このインタビューのあとに残念ながらお亡くなりになってしまったので、最後の映像となってしまいました。このタイミングでお話をお伺いすることができて良かったと思っています。
早稲田の建築に流れているのは、一言で言えば「反骨精神」です。東大が官であるならば、我々は民の代表として、他にはできないことをやったという自負があります。草創の大先輩たちが、どのような思いで建築と向き合い、戦ってこられたかを身を持って感じて欲しい、そんな思いがアーカイブスには込められています。
昨今の建築は厳しい時代に入っています。新しい建築というのは求められていないというような意見を目にすることもあります。しかし、この時代だからこそ求められる建築が必ずあるはずです。
戦後の焼け野原から立ちあがり、物資が充分にない時代に道を切り拓いてきた方々の姿は、大きなヒントとなるでしょう。
この事業はOBのためのものではありません。今の学生やこれから進学してくる方々に早稲田建築の精神が継承されたときに、目標を達することができると思っています。
建築を志している方は、是非、WEBページを覗いてみてください。